書評

【書評】Gとクッキーと行動分析学

僕は常日頃から「行動」することが大事だと思っているし、

いろんな人にもとにかく行動するようにアドバイスしている。

何もしないよりは行動した方が一歩前進するし、

何もしなかった時間と言うのは無駄で本当にもったいないからだ。

だからこの本のタイトルに惹かれて読んでみようと思った。

杉山尚子著「行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由」

読み始める前は、自分の行動を評価してこれは良かった、あれはダメだった、

とかふり返って見て自分の今後の活動に恩恵があればいいかなと

思っていたのだが、

入門とはいえ、結構難しい。(そして本の内容は予想と違っていた)

著者もあとがきの最後のページで

どうしても教科書的になるのを避けられなかった、すまん

と謝っている。

しかし、とてもいい本だと思ったのでこの本に興味のあるひと、

あるいは既に読んだ人の理解の助けになればと思い、

自分なりにここさえ押さえておけば本書の内容を理解出来ると思った点を解説していく。

これを読めばきっと行動分析学の門を叩いても門前払いされないはず。

「行動分析学入門」の入門

ここから「教科書的」な内容になるけれど、

必要最小限に絞って書いてあるのでどうか読んで欲しい。

後半のゴキブリの話とか結構面白いから!

 

行動分析学とは人、動物の行動を分析して原因を突き止める科学であり、

大事だと思った点は以下4点

  • 意思や性格、気質などは行動の原因としない。例:禁煙を決意したのにタバコに手が伸びてしまう場合、タバコに手が伸びてしまう原因を「意思が弱い」としない。
  • 分析の単位は「瞬間に起こるアクション」とする。例:「歩いている」というのは「歩く」という行動が「繰り返し起こっている」ことなので「歩く」を単位とする。
  • 行動とは死人には出来ない活動のこと。これは理解しづらいが、生きている人が出来るかどうかは考えずに、「死人が出来たら行動では無い」だけを考えればいい。例:<行動とは言えないもの>車にひかれる、怒らない、崖から落ちる 等
  • 行動の原因を突き止める時は、人や動物で実験をする。(頭の中だけで考えない)

4つ全部理解出来ないかもしれないので、

最低でも1番目の「意思や性格、気質などは行動の原因としない」だけ

覚えておいてください。僕もこれだけ意識して取り合えず1週目読み切ったので。

 

そしてこの次に出てくる行動随伴性という概念が超重要

行動随伴性:行動の原因を分析する仕組みで、行動とその直後の状況の変化との関係

概念というとよく分からないと思うので、

トイレに入る時に電気をつける事を例に説明する。

下図は「電気のスイッチをつける」という行動によって、

「暗くて見えない」状況から「明るくて見える」状況に変化している事を表している。

直前 行動 直後
暗くて見えない ➡︎ 電気のスイッチをつける ➡︎ 明るくて見える

まさにこの図が行動随伴性だと思ってもらえればいい。

あるいは、ある「行動」とその「前後の出来事」をこの図に落とし込んで考える事と

みなしてもいい。

本書では行動分析の説明をする時に、この図が何度も出てくる

著者は行動分析学を僕らに知って欲しくて、いろんな行動を説明する度に

毎回この図を出して丁寧に説明しています。この図が無かったら行動分析を理解できず

僕はそっとKindleからこの本を消していたことでしょう。それくらい大事!

行動を説明している文章の内容が分からなかったら、次のページにこの図と似たものが

描いてあるのでこれを見てから説明文を見よう。

行動分析学では、「行動随伴性」という概念で理解しようとするので、

行動随伴性を制する者が「行動分析学入門を制する」と言っても過言では無い、

と僕は思った。

ゴキブリが好き?

次は行動随伴性によって行動を見た時に、行動の直後に起こる変化が、

行動の「頻度」をどう変化させるかに焦点を当てる。

本書では具体例から説明していたが、

先に丸暗記した方が楽なのでまずは下の表を見て欲しい。

好子 嫌子
出現 強化 弱化
消失 弱化 強化

新しい単語が6つ出てくる。

  • 強化:行動の頻度を上げること
  • 弱化:行動の頻度を下げること
  • 好子:行動の頻度を上げるもの
  • 嫌子:行動の頻度を下げるもの
  • 出現:状況が「〜ない」→「〜ある」の変化
  • 消失:状況が「〜ある」→「〜ない」の変化

もう一度表を載せておく。

好子 嫌子
出現 強化 弱化
消失 弱化 強化

行動随伴性は上表から<好子or嫌子>と<出現or消失>を組み合わせて

その結果が<強化or弱化>になる。

例えば前述したトイレに入る時に電気のスイッチつける例で言えば

直前 行動 直後
暗くて見えない ➡︎ 電気のスイッチをつける ➡︎ 明るくて見える

電気をつける事で明るくなり、よく見えて安心して用が足せるという好子出現して、

電気をつける行動が強化される。

覚え方のコツ

好子、出現、強化を正(+)、

嫌子、消失、弱化を負(-)

として下記の様に覚えるといい。

  • 好子出現は強化 好子x出現=正(+)×正(+)=正(+)=強化
  • 好子消失は弱化 好子x消失=正(+)×負(-)=負(-)=弱化
  • 嫌子出現は弱化 嫌子x出現=負(-)x正(+)=負(-)=弱化
  • 嫌子消失は強化 嫌子x消失=負(-)x負(–)=正(+)=強化

本書ではこの部分の説明がさらっとなされているので、是非ここで理解して欲しい。

これを読んでいるあなたは本当にラッキーだ!(自画自賛)

色々な例を挙げて説明しているが、取り敢えず上の表を丸暗記すれば理解出来る。

僕は本書を読んだ時に、この表と具体例のページを8回くらい往復した。

大事な事なのでもう一回表を載せておく

好子 嫌子
出現 強化 弱化
消失 弱化 強化

あと、注意点として好子と嫌子についてだが、好子は行動の頻度を上げるから

行動する本人にとって好きなもの、好ましいもの、嫌子はその逆と考えると

そのパターンに当てはまらない場合もあり混乱するので絶対やめよう

ちなみに、本書でゴキブリが好子になる例が挙げられている。

最後にそのゴキブリの例を上げる。

著者は、自身はゴキブリホイホイを仕掛けると翌朝その中を見たくなると書いている。

新しく仕掛ける度にのぞいて見るのだから、ゴキブリホイホイを覗く行動は

強化されていると言って良い。行動の原因は行動の直後の状況変化にあり、

行動随伴性は下の様になる。

直前 行動 直後
ゴキブリが見えない ➡︎ ゴキブリホイホイを覗く ➡︎ ゴキブリが見える

状況が「見えない」から「見える」様になるから「出現」だ。

だからこの時に出現したゴキブリは定義に照らし合わせると「好子」になる。

好子(+)x出現(+)=強化(+)

これを好子出現の強化という。

 

こうやって色々な行動に対して、

行動随伴性を用いて行動の原因を突き止めていく事がこの本に書いてある。

応用が後半に書かれているので、行動随伴性だけでも理解しておかないと

何のこっちゃと置いてけぼりにされてしまう。

これだけでも知っておけば本書を読みやすくなるし、

実際の生活で行動を観察するのが面白くなると思う。

クッキーと絵カード

行動分析学の応用で興味深かった事を1つ紹介する。

それは障害児教育の分野で、言葉に遅れがあったり言葉が話せない子供達に

コミュニケーションを獲得させるのに行動分析学を元に開発された

PFCSと呼ばれる手法を使った事だ。

従来は言葉の発声そのものを教えることに重点を置いていたが、

この方法は言語「行動」に着目した。

通常言語習得の訓練では、子供にクッキーという言葉を伝えて、

子供にクッキーと返させる事を繰り返して教える。クッキーが上手に言えた時に

聞き手が子供にクッキーを手渡すという事を行う。

PFCSでは、発達障害児や自閉症児にクッキーの絵カードを渡しておく。

クッキーと発音させる代わりに、子供がクッキーの絵カードを聞き手に渡す事によって

聞き手がクッキーを子供に与える。行動随伴性は下図の様になる。

直前 行動 直後
通常の言語習得 クッキーがもらえない ➡︎ 「クッキー」と言う ➡︎ クッキーがもらえる
PFCS クッキーがもらえない ➡︎ クッキーの絵カードを渡す ➡︎ クッキーがもらえる

発音と絵カードを渡すのは全く違う行為だけど、

行動随伴性(直前と直後)は同じだから機能の点では同じ事だ。

話すことにハンデのある子に、行動は違うけれど機能が同じ事をさせて

コミュニケーションを取る考え方が面白い。

僕は読み始めた時は日常の行動を行動随伴性で見てみるのが

面白しろそうだな、くらいにしか考えてなかったけれど、

PFCSの様に、行為は異なるけど機能が同じ物を使って、

出来ない行動をカバーするはものすごく応用範囲広そうだし、

困ってる人の助けになって価値提供にもる、

滅茶苦茶社会貢献度高い思った。

(ゴキブリが好きとか嫌いとか言っている学問ではなかったんやな)

あと、先日読んだ人工知能の本を思い出した。

(最後に書評のリンクを貼っておくのでよかったら読んで欲しい。)

人工知能が訓練時の会話で適切な画像を判断して表示する事で

絵カードを何枚も持たなくて済むし、聞き手役にもなれそうだ。

他にも色々とトレーニングのサポートになるんじゃないかなって思った。

(ディープラーニングという技術によって、

人工知能の画像認識のレベルは飛躍的に向上した。)

 

行動分析学は教育や注意、しつけにも応用できる。

ある人の行為について「行儀が悪い」「しつけが悪い」「やる気がない」

と言った意志や気質ではなく、行動の変化に注目して原因を突き止めれば、

(原因を見極めるための訓練は必要だが)

その人に的確な注意やアドバイスが出来るはずだ。

「お前やる気がないからダメなんだよ」

と言われて態度を改める人はあまりいない。

実際、組織行動マネジメントやスポーツのコーチングに応用されているから、

実生活だってよくする可能性を十分秘めている。

この本のタイトルに少しでも引かれた人は是非読んで見てほしい。

この記事の内容が本書を読むのにきっと役に立つはずだ。

 

今投資合戦が激アツな学問の話
人工知能の話

無料のメルマガ配信です。
>>>メルマガ登録<<<

36歳という微妙な歳で起業した男の物語はこちら
ナガヒロのプロフィール